凶行への重い断罪は当然だろう。同時に、なぜ防げなかったか。投げかけられた社会のひずみを問い続けていかねばなるまい。

 2022年7月、参院選の応援演説中に安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件の裁判員裁判で、奈良地裁は、殺人や銃刀法違反などの罪に問われた山上徹也被告に、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。

 判決は、多数の聴衆の前で2度銃を発射したことに「悪質性と危険性は他の事件に比べても著しく高い」と指弾した。使われた手製銃も銃刀法に該当とするなど、起訴内容の全てを認めた。結果の重大性を直視した判断といえよう。

 裁判は被告が殺人罪を認める中、宗教信者の子で困窮や孤立に苦しむ「宗教2世」として直面した境遇が、量刑に反映されるかが最大の焦点だった。

 弁護側は、被告の母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に1億円を献金して自己破産し、兄が自殺するなど家庭が崩壊した生い立ちの影響を主張。教団関連団体に安倍氏が送ったビデオメッセージが、危機感や絶望感を呼び起こしたとした。

 地裁は犯行の遠因になったとしても「生い立ちが大きく影響したとは認められない」と退けた。

 被告は善悪を判断できる40代の社会人であり、手製銃は弾がどこに飛ぶか分からず、周囲の市民に被害が出た恐れがあるとの検察側の指摘に沿った形といえよう。

 一方で、15回の公判では、教団への高額献金や霊感商法で家庭が崩壊し、被告ら宗教2世が厳しい環境に置かれている状況が浮き彫りとなった。

 22年12月に悪質な寄付勧誘を規制する法律は成立したが、裁判に出廷した被告の妹は、救済窓口の乏しさを訴えた。

 教団は東京地裁から解散命令を受けて即時抗告し、高裁が年度内にも判断する可能性がある。

 事件後、自民党では教団との多くの接点が問題となった。自己申告だけでも、所属議員の約半数近くが会合の出席や選挙の支援などで関わりがあったとの党内調査を公表している。

 党として関係を絶ったというが、教団が掲げる政策を推進する「推薦確認書」を交わした議員らが新たに判明し、衆院選で多数の自民議員を応援したとする文書が韓国本部で見つかったとの報道もある。第三者調査を通じて、未解明の部分も多い疑惑や癒着の実態をつまびらかにすべきだ。