2025年に日本国内で放送・配信されたドラマで、評価するべき俳優はだれか。ドラマ偏愛コラムニストの吉田潮さんが作成した「2025年俳優ランキング」を紹介する。第1回は男性部門ベスト5――。(第1回/全3回)
アカデミー賞のトロフィー
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思わず引き込まれた中村倫也の数十秒

今年もやります、超主観&偏向的「ベスト俳優ランキング2025」。ドラマは地上波から有料配信系へ、役者の主戦場が完全に移行しはじめている。個人的には2025年は「NHK、WOWOW、Netflix」のスリートップが豊作だった印象も。今回はベスト10ではなく、さくっと凝縮版ベスト5でお届け。早速5位から発表しよう。

5位 中村倫也 31点
高学歴かつ軽妙洒脱な異能力者が見せた途方もない悲しみ

そもそも技量が高い中村倫也は、傲慢で居丈高な人間から人畜無害の癒し系まで難なくそつなく演じることができる。『DOPE麻薬取締部特捜課』(TBS)では異能力者の捜査官という役どころだったが、課されたタスクは大きかった。東大法学部卒、元警視庁のSAT所属、現在は厚労省麻薬取締部の捜査官。文武両道エリートであり、超視力をもつ異能力者であり、薬物使用の噂がある要注意人物でもあり。

このドラマ自体は、近未来・異能力・薬物犯罪・公権力の不正に異能力者による征服など、要素がてんこもりで正直疲れる作品だが、倫也の軽妙洒脱に仕上げた人物像と喜怒哀楽劇場は見ものだった。腕の立つ役者がひとりいれば、視聴を継続させるんだなと改めて感心。

特にすごかったのは、妻(入山法子)とお腹の中の子を殺されたときの場面。信じがたい光景を目の当たりにしたときの、驚愕と悲しみと絶望にはひきこまれた。数十秒のシーンだったが、「ああ、これは中村倫也にしかできない繊細な感情描写だったなぁ」と思ったもの。飄々と軽やかに見せておきながら、実は抑えきれない悲憤が原動力になっている男の、「感情による体温の乱高下」を全10話で魅せ切ったので、高得点につながった。