女子プロレス「スターダム」のワールド王座を保持する〝闇に落ちた不死鳥〟上谷沙弥(28)が、〝鉄人〟小橋建太(58)にどう喝まがいの猛アピールだ。女子初となる東京スポーツ新聞社制定「プロレス大賞」最優秀選手賞(MVP)を目指す上谷は、2021年度から同大賞の特別選考委員を務めている小橋がオーナーを務めるジム「エニタイムフィットネス等々力店」(東京・世田谷区)を襲撃。令和の極悪女王が鉄人に迫った主張とは――。
上谷 おい、小橋! 今日は言いたいことがあって来たんだ。沙弥様は今年プロレス大賞のMVPになりてえんだよ! お前審査員やってきただろ? 今年1票くれよ。
小橋 上谷選手じゃないか、会えてうれしいよ。いい技の受けっぷりな上に悪い中にも優しさがあるっていう新しいヒールのスタイルを確立していていいと思う。この前X(旧ツイッター)を見ていたらラヴィット!(TBS系)でキス顔してるのを見た。その後に照れて芸人さんを蹴り飛ばしてるのがすごいよかった。
上谷 あれ見てたんですか! とっさの反射神経で気が付いたら蹴ってました(笑い)。恥ずかしい…。
小橋 ハハハ。まあ、これからの10、11、12月の試合は審査員の印象にも残る月になる。後半の試合もやり抜かないといけないね。
上谷 ここからが本当に勝負だと思ってますし、私は本気でスターダムで東京ドームで興行したいんです。そのためにも今まで女子でプロレス大賞MVPって誰もいなかったことだと思うので、ここで風穴をぶち破って飛躍していきたい。私が女子プロレスを変えます。ちなみに小橋さんはプロレス大賞MVPを2回受賞していると思うんですけど、どんな人がMVPにふさわしいと思いますか?
小橋 プロレス界を一番盛り上げた人。そしてね、俺は新人の時に毎日合宿所に取材に来ていた東スポの記者に「プロレス大賞で一番の賞はなんですか?」って聞いたら、その人から「まずベストバウト(年間最高試合賞)を決めてからMVPを決めるのでベストバウトです」って言われた。今はMVPから決めるようになったけど、当時の俺はベストバウトを目指そうと思ってた。だから話題はもちろんだけど、俺は試合でも納得させないといけないと思ってる。
上谷 そうなんですね。私も年間百何十試合ってある中で、一番心掛けてるのって「いかにすごい試合をするか」はもちろんですけど、「いかに人の記憶や心に残るか」が大事だと思ってて。見てくれたファンの心はタイトル同様に尊い。だからファンのみんなの記憶に残るっていうことを大事にして戦ってきました。
小橋 俺は引退して12年になるんだけど、「あの試合を見て元気になった」「力をもらいました」って言ってもらえることが、プロレスをやっててよかったなって思えるんだ。なんか俺たち似てるな!
上谷 そう思っていただいて光栄です!
――今まで女子がMVPを受賞した過去はないですが小橋さんの見解は
小橋 女子がMVPを取ってもいいじゃないか。いろんなスタイルが出てきたから、俺は殊勲、敢闘、技能賞に女子が入る時代になるって言ってきた。だから最初の女子でMVPを狙うチャンスだよ。
上谷 ありがとうございます!
小橋 そこに何が必要かっていうと品だと思う。俺は(ジャイアント)馬場さんから「品を持て」って言われて、細かいことだとベルトを大事にするだとか、そういう細かいことも大切にしてきた。上谷選手はH.A.T.E.でのスタイルもあるだろうけど、チャンピオンとして品は大切にしてほしいと思う。
上谷 私自身ヒールではあるけど、動きとか振る舞いに対して美しさを大事にしたいって常に思ってます。ただただ悪いことして相手を潰すだけじゃなくて、一人ひとりの選手の考え方に向き合って感情をぶつけたり、相手の感情を引き出すことを意識していて。悪さの中にも美しさや品を忘れないヒールになりたいなって思って、自分のレスラー像をつくってきています。
小橋 今言った、相手を引き出すってすごく大事だと思うし、それがチャンピオンとしての役割だと思うからね。
上谷 ここからも気を引き締めて頑張って行くので、沙弥様から目を離さないでください。最後に小橋さんの幸せを呼ぶチョップをいただけないかなと思いまして…。
小橋 女子にやるの初めてかもしれない。
上谷 怖い怖い怖い怖い。(強烈なチョップをくらい)うわー! 痛い…ありがとうございます! 頑張ります! 失礼します!
☆こばし・けんた 1967年3月27日生まれ。京都・福知山市出身。87年に全日本プロレスに入団し、翌年2月デビュー。四天王の一人として3冠ヘビー級、世界タッグ王座に君臨。2000年のノア旗揚げ後はGHCヘビー級王者として13度の防衛に成功。プロレス大賞MVPを2度、年間最高試合賞を8度受賞した。186センチ、115キロ。
☆かみたに・さや 1996年11月28日生まれ。神奈川県出身。2019年8月10日後楽園大会で渡辺桃を相手にデビュー。23年3月に「V15」のワンダー王座最多連続防衛記録を樹立した。24年7月に極悪軍団「H.A.T.E.」に加入し、同年12月にワールド王座を戴冠すると大ブレーク。必殺技はスタークラッシャー。168センチ、58キロ。