※本稿は、小林義崇『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。
多くの人が陥る「節税の罠」
節税に関する情報は、インターネット上に溢れています。しかし、その情報を鵜吞みにすると、必ずしもお金が増える結果にならないことに注意が必要です。
その典型例が、「控除や経費を増やして節税をする」というやり方です。
たとえば生命保険料を支払うと生命保険料控除を使って節税することができます。そのため、保険の営業の人は、「保険を増やすと税金が少なくなる」とすすめてくることがあります。しかし、この言葉を鵜吞みにしていると、お金はどんどんなくなっていきます。
具体的な数字で考えてみましょう。たとえば年間8万円の生命保険料を払って控除を申請したとします。生命保険料控除には上限があるため、この場合の控除額は4万円です。この控除による節税効果は、所得税と住民税を合わせた税率が20%の人なら、8000円ほどになります。
このときに「8000円得した!」と考えてしまうのが、お金が減る人の思考法です。もう少し冷静になって、お金の流れを見てみましょう。
保険料として8万円を支払う
年末調整で約8000円の節税効果が発生
差し引きで約7万2000円を自己負担している
そうです。「8000円の得」ではなく、「最終的に7万2000円の負担になる」のです。
「税金を払いたくない」が招く3つの代償
このように最終結果まで考えるのが、税金とうまく付き合える人の考え方です。その上で、この負担に見合う価値(リターン)がその保険にあるのかを判断します。保険に入ることで必要な保障が手に入ると思うなら良いのですが、そうでなければ立ち止まらなくてはなりません。
この思考ができずに、「節税のための出費」を繰り返していると、手元のお金は面白いように消えていきます。支出の判断基準が「本当に必要か」「投資に見合う価値があるか」ではなく、「控除や経費になるかどうか」にすり替わってしまい、あなたの財布をじわじわと圧迫していくのです。
実は、「税金を減らしたい」という意識を持つこと自体が、お金を失う原因になり得ます。
個人の所得税や、会社の法人税は、「利益」に対して課される税金です。利益が大きければ税金は増え、赤字なら税金がかかりません。ということは、「とにかく税金を下げよう」と考えると、必然的に「利益を下げる」方向に行動することになります。
売上を得るのを翌期に先延ばしにしたり、不要な交際費を増やしたりと、利益を追求する本来の目的とは真逆の行為に走ってしまうのです。
本当に成功している経営者は考え方が違います。彼らは、「払わなくてもいい税金は一円も払わない」と考える一方で、「払うべき税金はきっちり払う」という明確な姿勢を持っています。

