オードリー・タン氏、日本への警鐘 デジタル技術で分断は防げるか

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聞き手・小木雄太
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 台湾で初代デジタル担当相を務めたオードリー・タン氏(44)が5月に来日し、人工知能(AI)と民主主義をテーマに朝日新聞の単独インタビューに応じた。タン氏は、AIによって社会の分断を乗り越えられる可能性があると強調する。そして、人間がAIから必要とされなくなるような社会には進むべきではないという。AIと民主主義の未来はどこに向かうのか。

――AIなどのデジタル技術は分断を乗り越えるツールになり得るか

 2015年にはSNS上にAIが登場しており、今日急にAIが出てきたわけではない。AIアルゴリズムは、社会にはどのような違いを持つ人がいて、どのような違った意見があり、またそのどこに違いや共通点があるのかをすでに把握している。

 私たちは15年に台湾でPolisアルゴリズムを使ったが、現在では、XやYouTube、Facebookのコミュニティーノートで使われている。こうしたアルゴリズムを分析することで、「アンチソーシャルメディア(反社会的メディア)」を「プロソーシャルメディア(社会の役に立つメディア)」に変えられる。つまり、政治家や社会活動家は、こうしたプロソーシャルメディアから、市民の意見をすくい上げることができる。これは「ブロードリスニング」と呼ばれる手法だ。

政治家に求められる役割とは

――デジタル技術が発展した先、政治家に求められる役割とは

記事の最後ではオードリー・タン氏への単独インタビュー動画も視聴できます。日本でも社会の分断や政治不信が進みつつあります。デジタル技術が発展した先、民主主義の未来はどこに向かうのでしょうか。

 政治家はまず、喫緊の課題が…

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この記事を書いた人
小木雄太
政治部
専門・関心分野
国内政治、外交
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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2025年5月25日10時25分 投稿
    【視点】

    人工知能(AI)の導入には、人間関係の退行と相互不信という「AI社会(人工知能が私たちの社会に深く浸透し、私たちの生活に大きな影響を与える社会)」の思わぬ落とし穴がある。その落とし穴にどれだけの人が気づくことができているのか、ということが問

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院教授=米国政治外交)
    2025年5月25日13時9分 投稿
    【視点】

    タン氏の議論は、私たちの民主主義に関する思考が、無意識のうちにいかに欧米中心主義に陥っているかを教えてくれる。 確かに欧米の現状を見れば、民主主義や多様性の未来には暗雲が立ち込めているようにも見える。「グローバリゼーションがもたらしてきた

    …続きを読む